2024年03月22日
介護に関わる仕事のひとつとして「介護美容師」というものがあります。今、少子高齢化が進んでいることと、利用者の「美しくありたい」という気持ちに応えるべく充実した美容サービスを提供している介護施設もあり、介護美容師が活躍する場が増えてきています。
この記事では介護美容師という仕事の内容や必要な資格、働き方についてご紹介します。介護や美容に興味がある方は、ぜひ選択肢に入れてみましょう。
―― 介護が必要な方に美容サービスを提供する仕事
―― メイク、ネイル、ハンドケア、アロマセラピーも
―― 福祉美容師との違いは?
2.介護美容師に必要な資格は?
―― ヘアカットには美容師免許か理容師免許が必須
―― メイクやネイルは民間資格でOK
―― 介護系の資格は必須ではないが、知識は必要
―― 働きながら美容師免許を取得するには通信コースも
3.介護美容師の活躍の場、働き方は?
―― 3-1.介護施設や自宅訪問をして施術する
―― 3-2.フリーランスとして開業する
―― 介護美容師はこれからますます必要になる仕事
4.介護美容師におすすめの資格5つと取得方法
―― 4-1.福祉理美容師
―― 4-2.ヘアメイク・セラピスト
―― 4-3.認定福祉美容介護師(R)
―― 4-4.訪問福祉理美容師
―― 4-5.介護職員初任者研修
5.まとめ:理美容の資格を活かして活躍しよう
1.介護美容師とはどんな仕事?
まずは介護美容師とはどのような仕事なのか?どのようなサービスを利用者に提供しているのか?介護美容師の仕事内容や一般的な美容師、福祉美容師との違いについて見ていきましょう。
介護が必要な方に美容サービスを提供する仕事
介護美容師とは介護施設に出向いて高齢者や障がい者などの利用者の方に美容サービスを提供する仕事です。一般的な美容院と同様にヘアカットを中心とし、パーマやカラー、スタイリングなどの施術も行います。
お客様は介護施設の利用者となるため、一般的な美容院以上に身体に負担をかけないよう配慮する必要があり、美容だけでなく介護に関する知識やスキルも必須です。また、利用者やそのご家族の意向を汲み取りながらサービスを提供しなければならないため、高いコミュニケーション能力が求められます。
メイク、ネイル、ハンドケア、アロマセラピーも
「美しくなりたい」「おしゃれでありたい」という介護施設の利用者の気持ちに応える施術を行うのも介護美容師の仕事です。メイク、ネイルケア、ハンドケア、アロマテラピーといったさまざまな施術を行います。
おしゃれをする、なりたい自分になることで、気持ちも若々しくなり、心身の健康につながるでしょう。また、施術中に介護美容師と世間話などのコミュニケーションをとることで、気分転換になります。介護美容師は利用者の生活に刺激と潤いを与える大切な役割を担っているのです。
福祉美容師との違いは?
介護美容師と似たような仕事として「福祉美容師」というものがあります。違いは資格の有無です。美容師免許や理容師免許を取得して介護施設の利用者にサービスを提供する人を介護美容師、さらに福祉理美容に関する専門的な資格を取得した人が福祉美容師と呼ばれます。
福祉美容師になるために必要となる資格やその内容については後ほど詳しくご説明しますので、興味がある方はぜひ読み進めてみてください。
2.介護美容師に必要な資格は?
介護施設の利用者にヘアカットや美容に関する施術を行なう介護美容師として活躍するためにはどのような資格が必要なのでしょうか?ここからは介護美容師が取得すべき資格について見ていきましょう。
ヘアカットには美容師免許か理容師免許が必須
まずヘアカットを行うためには美容師や理容師免許が必須です。これは介護美容師も、一般的な美容師も変わりません。
美容師免許を取得すればヘアカット、パーマ、セットなどの施術ができるようになります。理容師も同様にヘアカットなどの施術が可能です。ただし、美容師免許では顔そりはできない、理容師免許ではパーマができないなど、可能な施術に違いがあります。介護美容師を目指すのであれば、まずは美容師、理容師の免許を取得しましょう。
なお、美容師試験を受験するためには養成機関で2010時間以上(うち実習810時間以上)の修業を積まなければなりません。2年ないしは3年修業を積んで、ようやく受験要件を満たせるようになります。
メイクやネイルは民間資格でOK
メイクやネイル、ハンドケアやアロマテラピーなどの施術に関しては必須の資格はありません。ただ、やはり専門的な知識やスキルは必須となります。それぞれの施術に関して民間資格があるので、まずはそれらを取得されることをおすすめします。
資格を取得することで、一定水準の知識やスキルがあることをアピールできるようになるため、利用者や施設からの信頼も高まるはずです。また、高齢者向けのメイクや美容ケアに関する知識を高めておくと、サービスの質の向上につながります。
介護系の資格は必須ではないが、知識は必要
介護の仕事には資格がないとできない業務もありますが、介護美容師であれば介護に関する資格は特に必須ではありません。しかし、介護施設の利用者に向けてサービスを提供するわけなので、可能であれば介護に関する専門的な知識やスキルを身につけて資格取得を目指しましょう。
短時間で効率的に取得するのであれば福祉美容師・訪問福祉理美容師の資格がおすすめです。詳しい内容は後ほどご説明しますが、いずれも美容師の資格を取得済みであれば受験することができます。
働きながら美容師免許を取得するには通信コースも
介護美容師になるためには美容師免許が必須ですが、これらは介護士など他の仕事をしながらでも取得することは可能です。前述のとおり、美容師の国家資格を受験するためには、厚生労働省が指定する養成機関で2~3年程度修業しなければなりません。
しかし、働きながら資格が取得できるよう夜間コースや通信教育を設けている美容学校も多いです。特に自宅での学習を基本として、実習など必要に応じて通学する通信教育がおすすめです。
通信教育の場合は3年間かけて修了するケースが多く、費用は50~70万円と、他のコースよりも安くなっています。
3.介護美容師の活躍の場、働き方は?
介護美容師は介護サービスの利用者が主なお客様となるため、美容院やサロンに来店した方に施術する一般的な美容師とは大きく働き方が異なります。ここからは介護美容師の働き方について見ていきましょう。
3-1.介護施設や自宅訪問をして施術する
基本的に介護美容師は介護美容サービスを提供している企業や介護事業所、美容院などに所属し、介護施設や医療機関もしくは介護サービス利用者のご自宅に訪問して施術を行います。依頼に応じて施設やご自宅に向かい、1日あたり4~5件程度の施術を行うことが多いようです。
会社や事業所、美容院に出勤して依頼が来るのを待つほか、自宅から訪問先に出向いて施術後に帰宅するという直行直帰型の働き方もあります。求人は一般的な求人誌や求人サイトで見つけることが可能です。
給与形態には月給制や月給と歩合の組み合わせ、完全歩合制などさまざまで、雇用形態や契約内容などによって異なります。
3-2.フリーランスとして開業する
上記のように企業などに属して働くほか、フリーランスの介護美容師として独立して働くという方法もあります。介護施設や医療機関と委託契約を締結した上で、普段は自宅や事務所で待機をし、依頼に応じて施設や利用者のご自宅に訪問して施術を行うというスタイルです。
フリーランスの場合は決まった給料が出るわけではなく、報酬は件数に応じた完全出来高制となります。フリーランスはやったらやった分だけ収入が増える、自宅にいながらにして仕事ができる、出勤日や労働時間にとらわれない、事業が拡大すれば従業員を雇って会社の経営者を目指すこともできるといった点がメリットです。一方で、依頼がないと収入がなくなってしまう、施術だけでなく営業や経理なども行わなければならないという側面もあります。
介護美容師はこれからますます必要になる仕事
冒頭でも触れたとおり、高齢化が進む中で介護美容師の需要も高まっています。「美しくなりたい」「おしゃれをしたい」という意識を持たれている方も多く、そうした気持ちを実現することで、高齢者が生きがいをもち前向きになれるはずです。また、施術の際に世間話をしたりするなどコミュニケーションの増加にもつながります。今、高齢者の心身の健康を維持する一つの施策として、介護美容が非常に注目を集めているのです。
ヘアカットだけでなくメイクやネイルなどのメニューを増やせば、あるいはスキルやコミュニケーション力を磨けば、より利用者や介護施設のニーズを満たせるようになり、依頼も増えるようになるでしょう。独立開業や収入アップも夢ではありません。
4.介護美容師におすすめの資格5つと取得方法
介護美容師には美容に関する知識やスキルはもちろん、介護に対する理解も求められます。ここからは、美容師免許を保有されている方向けに、介護や介護美容の専門的な知識やスキルを習得できるおすすめの資格を5つご紹介します。
4-1.福祉理美容師
「福祉理美容師」はNPO法人日本理美容福祉協会が認定する資格です。同協会が主催する「福祉理美容士養成講座」では、介護の知識や要介護者に対するヘアケアのしかたなどの実践的な知識・スキルを学ぶことができます。
全国各地で2日間にわたって開講されており、すでに美容師や理容師免許を取得している方が対象です。費用は2万7,000円で、受講後は3,000円で福祉理美容師の資格認定カードの交付を受けることができます。
出典:福祉理美容師協会
https://www.f-npo.org/academy.html
4-2.ヘアメイク・セラピスト
「ヘアメイク・セラピスト」は一般社団法人日本訪問理美容推進協会の認定資格で、同じく美容師・理容師免許の保有者が対象です。理美容の実践的な知識やスキルはもちろん、高齢者や身体が不自由な方へのケアのしかた、営業のしかたなど、幅広い内容を学ぶことができます。
東京をはじめ全国各地で受講可能です。指定のテキストで自主学習した上で、1~3日間の講座を受ければ資格を取得することができます。当協会では会員のサポートにも力を入れており、資格を取得して入会すると懇親会や独立支援といったサービスを受けられるのも強みです。
出典:一般社団法人日本訪問理美容推進協会
https://xn--lzr22mh1wnrk61m.club/
4-3.認定福祉美容介護師(R)
「認定福祉美容介護師(R)」は特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会の認定資格であり、美容師・理容師免許保有者が対象です。接遇マナーや心理学、薬剤の知識をはじめ、ベッドメイキングや歩行介助、寝た姿勢での散髪の方法など、福祉美容師として働く上で必要となる実践的知識・スキルが習得できます。
通学のほか通信講座も開講しているため、働きながらでも学びやすいです。通信講座や通学による実習を修了し、成績や出席率が基準に達していれば資格取得となります。
出典:特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会
https://www.medin.gr.jp/exam_sche/exam_riyoubiyou.html
4-4.訪問福祉理美容師
「訪問福祉理美容師」は日本訪問福祉理美容協会の認定資格です。施設や自宅で美容ケアができるようになることを目的とし、ヘアカットやアロマテラピーなど幅広い知識やスキル、訪問福祉美容の基礎知識、高齢の方との接し方についても習得します。
6時間程度の講座を受講すれば認定証の交付を受けることが可能です。通学のほか通信講座も開講しており、こちらも働きながら取得しやすい資格となっています。
出典:一般社団法人 日本訪問福祉理美容協会
https://jvbwa.or.jp/qualification/
4-5.介護職員初任者研修
「介護職員初任者研修」は介護の基本的知識やスキルの習得を目的とした資格です。その名のとおり、介護職になったばかりの方、これから目指される方向けの資格ですが、高齢者との接し方や更衣介助など介護美容や福祉理美容の仕事にも役立つ介護の基礎が学べるため、取得されることをおすすめします。
130時間の研修を受ける必要がありますが、通信教育やスクーリングで受講すれば3ヶ月ほど、最短で1ヶ月程度で取得することが可能です。
5.まとめ:理美容の資格を活かして活躍しよう
介護美容は介護サービスの利用者の生活に刺激と潤いを与え、健康な心身の維持に貢献できる重要なサービスといえます。
介護に関わる仕事や美容師・理容師を目指されている方、すでに美容師・理容師免許の保有者の方はもちろん、メイクやネイルなどの資格保有者やスキルをお持ちの方も、介護美容師になることで活躍できるフィールドが広がり、やりがいのある仕事に携われる可能性が高まります。興味があればぜひチャレンジしてみましょう。
介護21コラム記事監修者
株式会社アドバン
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