2023年12月22日
介護の仕事は無資格でも働ける?できること・できないことを解説
急速に進む高齢化に伴い、高齢者を支える介護士の需要はますます高まっています。
介護は必ずしも資格が必要な仕事ではなく、無資格でも介護士として働くことは可能です。ただし、無資格者が従事できる業務範囲は有資格者よりも狭く、介護業務の中でもできる仕事とできない仕事があります。
この記事では、介護関連の資格を持たない無資格の介護士ができること・できないことを解説します。さらには、無資格者へ義務化された認知症介護基礎研修についてもご紹介します。
これから介護の仕事を目指したい方はぜひ参考になさってください。
※この記事での「介護士」は介護福祉士の略称としてのものではなく、介護職を指します。
―― 身体介護(施設内のみ)
―― 生活援助
―― 送迎業務
―― 事務作業
2.無資格の介護士ができないこと
3.無資格者・有資格者の給料を比較
4.無資格・未経験の介護士に求められるもの
5.研修義務化で無資格の介護士は働けなくなる?
―― 認知症介護基礎研修を義務化
―― 研修義務化のねらいは認知症介護サービスの質の向上
6.まとめ
1.無資格の介護士ができること
介護業界は無資格・未経験でも応募可能な求人が多く、資格の有無で業務範囲に違いはあるものの、無資格でもできる仕事はたくさんあります。
ここでは、無資格の介護士はどのような仕事ができるのか、具体的な仕事内容をご紹介します。
身体介護(施設内のみ)
身体介護とは介護が必要な方の身体に直接触れて行うもので、その中でも食事介助、入浴介助、排泄介助の3つは「三大介護(三大介助)」と呼ばれています。介護施設や事業所に配置される介護福祉士の指示のもとであれば、無資格者でも身体介護を行うことができます。
生活援助
生活援助とは身体介護以外で利用者の身体に触れずに行う業務で、利用者が通常の日常生活を送ることを支援するサービスです。具体的には、居室内やトイレの掃除、洗濯、アイロンがけ、シーツ交換、衣類の整理、調理・配膳、買い物などがあります。このような利用者の身の回りのお世話は、無資格の介護士も対応できます。
送迎業務
利用者が自宅から通って介護サービスを受ける通所型施設の場合、利用者の送り迎えをする送迎業務が発生します。送迎業務は介護の資格がなくてもできます。ただ、車の運転だけでなく利用者が乗り降りするときの介助も必要になるため、職場によっては介護職員初任者研修を修了していなければ送迎できない場合があります。
事務作業
介護施設では利用者と触れ合う現場の介護業務の他にも、さまざまな事務作業が発生します。具体的には施設の受付や電話対応、備品の発注・管理、レクリエーションの企画・準備などがあり、これらの業務は無資格でもできます。
2.無資格の介護士ができないこと
無資格の介護士ができない仕事として、「訪問介護において直接身体に触れる身体介護をすること」があります。 無資格者が身体介護をするには有資格者の指導が必要ですが、訪問介護は、施設や事業所で行う介護サービスとは違って基本ひとりで行うので、「無資格者が有資格者の指導を仰ぎながら介護を行う」ということができないからです。
訪問介護で身体介護ができるのは以下の有資格者に限られます。
○介護福祉士
○実務研修修了者
○介護職員初任者研修修了者
○居宅介護または重度訪問介護を提供している者
○旧介護職員基礎研修修了者
○旧訪問介護員1級または2級課程修了者
訪問介護の中でも、調理や洗濯、掃除などの生活援助に関しては、2018年に新設された「生活援助従事者研修」を受講すれば上記の資格を持たない方でも従事できます。ただし、生活援助従事者研修の修了者ができる業務は生活援助のみで、身体に触れる身体介護をすることはできません。
【コロナ禍における特例】
厚生労働省から、新型コロナウイルス感染症に関連する、介護サービスの臨時的な取り決めが出されており、その中で、新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に有資格者の人員確保が難しくなった場合、高齢者へのサービス提供に従事した経験があり、かつ利用者へのサービス提供に支障がなければ、無資格者であっても訪問介護員として従事することが認められています。
※参照: 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱いについて」のまとめ)
3.無資格者・有資格者の給料を比較
厚生労働省の統計「令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」より、「資格を持つ介護士」と「資格を持たない介護士」の平均給与額を比較しました。
平均給与額(令和2年) | |
資格なし | 275,920円 |
資格あり 全体 | 318,150円 |
介護職員初任者研修 | 301,210円 |
介護職員実務者研修 | 303,230円 |
介護福祉士 | 329,250円 |
参考:厚生労働省|令和2年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要
※対象:介護職員処遇改善加算(I)~(V)を取得(届出)している事業所
介護関連の資格には、介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士などがあり、この表を見ると、上級資格になるほど平均給与額が上がっていることがわかります。介護士は資格を取ることで給料が上がる可能性が高いため、給料アップを望むなら資格取得を目指していくことがおすすめです。
4.無資格・未経験の介護士に求められるもの
介護関連の資格は、介護の知識・技術を持っていることを証明するものといえます。しかし、資格や技術があるからといって必ずしも介護の仕事が向いているとは限りません。
一般的に介護職に求められるものには以下が挙げられます。
○コミュニケーション能力
○こまめな報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)
○明るく穏やかな人柄
○利用者の小さな変化に気づける観察力
○利用者一人ひとりに合った対応がとれる柔軟性
これらのスキルがあれば介護士に向いているといえ、無資格・未経験でも職場で必要とされる人材になれるでしょう。介護技術や知識は介護業務の実務経験を重ねることで徐々に習得できるため、無資格・未経験だからといって物怖じすることはないのです。
5.研修義務化で無資格の介護士は働けなくなる?
令和3年度(2021年度)介護報酬改定にともない、無資格者には認知症介護基礎研修の受講が義務付けられることになりました。ここでは、無資格の介護士が知っておきたい研修義務化の概要をわかりやすく解説します。
認知症介護基礎研修を義務化
認知症への対応力向上に向けた取り組みとして、無資格者には認知症介護基礎研修の受講が義務付けられました。
研修受講の対象は介護に直接携わる職員のうち、医療・福祉関連の資格を持たない方です。研修はeラーニング対応で6時間程度のカリキュラムが組まれ、認知症介護をするうえで最低限必要な知識・技能を習得します。
※2021年度~2023年度は努力義務(新入職員は1年のみ猶予)。2024年度に完全義務化。
研修義務化のねらいは認知症介護サービスの質の向上
認知症患者の尊厳を保障し本人主体の介護を行うためには、無資格者も含め介護に携わるすべての方が認知症について理解することが大切です。
そこで、介護従事者の認知症対応力を向上させ、認知症介護サービスの質を上げるために、無資格者に対して認知症介護基礎研修を義務化することになりました。1日程度で修了できる研修の義務化により、認知症介護に関する基本的な知識や技術を持つ介護従事者を増やせます。
研修の完全義務化は2024年度からですが、新入職員の場合は受講の猶予期間が1年とされているため、これから介護の仕事を目指す方は早めの受講が必要になるでしょう。
6.まとめ
介護業界は無資格者や未経験者を歓迎する求人も多く、介護の仕事に就く上では必ずしも資格が必要になるとは限りません。生活援助や送迎業務、事務作業は無資格者でも従事でき、また介護福祉士の指示のもとであれば身体介護も行えます。
しかし、介護業務の中には資格がなければできない仕事もあるため、仕事の幅を広げたい方は実務経験を積みながら介護関連の資格取得を目指すことをおすすめします。
介護21コラム記事監修者
株式会社アドバン
人材採用サポート・Web事業・印刷物制作を中心とする事業を展開する株式会社アドバンを1991年に設立。人材採用サポートの中でも、医療・介護業界に特化する専門求人サイト『医療21』『介護21』を運営。リアルな求人情報を届け、人材紹介ではない”ベストマッチングの場”を提供している。