2024年04月15日
自宅で介護サービスが受けられる訪問介護。高齢化によってその需要が高まり、訪問介護事業所も年々増加し、それに従って訪問介護員(ホームヘルパー)の求人も増えてきています。
この記事では訪問介護員を目指されている方のために、その仕事内容や平均給与、働き方などをご紹介します。
―― 介護保険法に定められた「訪問介護」
―― 障害者総合支援法に定められた「居宅介護」
2.訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事内容は3つ
―― 2-1.身体介護
―― 2-2.生活援助
―― 2-3.通院等乗降介助(介護保険タクシー)
3.訪問介護員(ホームヘルパー)にできない3つのこと
―― 3-1.医療行為となるケア
―― 3-2.利用者以外へのサービス提供
―― 3-3.日常生活の援助の範囲を超えるサービス
4.訪問介護員(ホームヘルパー)に必要な3つの資格
―― 4-1.介護職員初任者研修
―― 4-2.介護福祉士実務者研修
―― 4-3.介護福祉士
5.訪問介護員(ホームヘルパー)の給料の目安
6.訪問介護員(ホームヘルパー)の3つの働き方
―― 6-1.事業所や施設に就職する
―― 6-2.事業所の登録ヘルパーになる
―― 6-3.派遣会社の派遣ヘルパーになる
7.訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事に向く人
―― 時間に縛られず働きたい
―― ひとり一人の利用者と向き合いたい
―― 臨機応変に行動できる
この記事のまとめ
1.そもそも訪問介護とは?
一般的な介護サービスは要介護者が施設に入所あるいは通所して介護サービスを受けますが、訪問介護は利用者が自宅で介護を受けることができるサービスです。訪問介護員は利用者の自宅に訪問し、入浴や食事、排泄などの身体介護、料理や洗濯、掃除などの生活援助などを行います。
なお、訪問介護に似たようなサービスとして居宅介護というものがあります。いずれも利用者が自宅で介護サービスを受けられるという点では共通していますが、法律上の位置づけや対象者などが異なります。
介護保険法に定められた「訪問介護」
訪問介護は介護保険法や介護保険法施行規則にもとづいて行われる介護サービスです。加齢や疾病によって身体機能が低下した高齢者が自宅で自立した生活を送れるようにすることを目的として、身体介護や生活支援、通院等乗降介助などの介護サービスを提供します。
利用対象者は65歳以上の第1号被保険者、もしくは特定疾病等の認定を受けた40~64歳の第2号被保険者です。そのため、ほとんどの場合利用者は高齢者ということになります。
障害者総合支援法に定められた「居宅介護」
居宅介護は障害者総合支援法に基づき実施される障害福祉サービスです。障がい者がある方が自宅で自立した生活を営めるよう支援することを目的とし、身体介護や生活支援、通院等乗降介助などの介護サービスを提供します。
対象者は18歳以上で障害支援区分1以上の身体障害、精神障害、知的障害をもつ方と、18歳未満で身体支援区分1相当の障害を持っている方です。ゆえに、居宅介護は幅広い年齢層の方が利用します。
なお、65歳以上で障害をお持ちの方は基本的に介護保険制度が適用され、訪問介護サービスを受けることになります。
2.訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事内容は3つ
上記のとおり、訪問介護員は利用者である高齢者の自立した生活の支援あるいは身体機能の衰えを防止するために自宅に訪問して介護サービスを提供します。提供するサービスとしては「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助(介護保険タクシー)」の3つがあります。それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
2-1.身体介護
身体介護とは利用者の身体に接触して行う介護のことです。具体的には食事や服薬、入浴、トイレへの移動、排泄、着替えの介助、おむつ交換、体位の変換などが挙げられます。たとえば歩行が困難であればトイレまで付き添って行くなど、利用者の状態に応じて、自力ではできないことを手助けするのが身体介護です。
3種類ある介護の業務の中でもメインといえます。身体介護は特に介護員の身体に負担がかかり、ミスをした場合は重大な事故が発生するおそれもあるため、しっかりと技術を身につけ丁寧に行うことが求められます。
2-2.生活援助
生活援助とは身体介護以外の、利用者の家事をサポートする業務です。利用者の日常生活動作能力(ADL)や生活意欲の向上を目的とし、利用者と共に行う自立支援のためのサービスとして位置づけられていて、料理や掃除、洗濯、買い物、薬の受け取り、移動介助などが挙げられます。
ただ、生活援助は家事代行サービスではありません。面倒な家事を丸投げするといった使い方はできず、あくまで利用者が自身ではできない家事に限って代行します。また、利用者の家族が行うべき家事を訪問介護員に代行してもらうこともできません。
2-3.通院等乗降介助(介護保険タクシー)
通院等乗降介助(介護保険タクシー)とはその名のとおり病院まで付き添って利用者の通院をサポートする介護サービスです。通院には介護保険タクシーが用いられ、訪問介護員が車両までの移動や乗車時の介助を行い、降車やその先の移動介助、さらには受診手続きなども行います。
なお、通院以外にも買い物や投票、銀行や役所での手続きなどの外出介助を行う場合もあります。
3.訪問介護員(ホームヘルパー)にできない3つのこと
訪問介護員は利用者に対してさまざまな介護サービスを提供します。しかし、要望があったらなんでも対応できるというわけではありません。ここからは訪問介護員ができない3つの仕事について見ていきましょう。
3-1.医療行為となるケア
医療行為とは傷病の治療や診断などの行為を指します。これらは医学的な判断や技術をもって行わなければ人体に危害を及ぼすおそれがあるため、医師や看護師などの有資格者にのみ許可されています。
従って、訪問介護員は介護保険サービス、自費サービス問わず、利用者に対して医療行為をすることは認められていません。
3-2.利用者以外へのサービス提供
訪問介護員がサービスを提供する対象者はあくまで利用者本人に限られます。前述のとおり、料理や掃除、洗濯などの家事の代行も訪問介護員の業務の範疇ですが、それはあくまで利用者からの依頼で、かつ本人が自力でできないケースに限ります。利用者以外の食事や洗濯を代行するのは対象外です。
たとえば利用者の家族から「食事を作ってほしい」「洗濯をしておいて」と言われても応じる必要はありません。
3-3.日常生活の援助の範囲を超えるサービス
利用者本人の依頼であったとしても、日常生活の援助の範疇を超えるようなサービスはできません。たとえば、タバコや酒といった嗜好品など食材や日用品以外のものの買い出し、犬の散歩、家に来た利用者の友人の対応などです。
訪問介護員は家事を何でも頼める家事代行業者や便利屋ではありません。しっかりとサービスの内容が規定されていることを、利用者・ご家族、訪問介護員本人が認識しておくことが大切です。
4.訪問介護員(ホームヘルパー)に必要な3つの資格
資格がなくても訪問介護員として働くことは可能です。しかし、訪問介護事業所に所属して訪問介護を行う場合は「介護職員初任者研修」という資格が必要となります。また、他にも資格を取得することで就職・転職や待遇アップ、スキルアップにつながる可能性が高くなります。ここからは訪問介護員として働くうえで役立つ資格を3つご紹介します。
4-1.介護職員初任者研修
介護職員初任者研修とは介護関係の資格の中でも入門資格に位置づけられます。実務経験がなくても取得でき、介護の基礎知識を学ぶことが可能です。
通学もしくは通信教育(一部の科目では通学が必須)で合計130時間の研修を受講することで取得できます。取得までの期間はおおよそ4ヶ月くらいが目安です。
4-2.介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は初任者研修の上位に位置づけられる資格です。さらにハイレベルでかつ実践的な介護に関する知識や技術が習得できます。取得者はサービス提供責任者になれ、たん吸引などの一部の医療行為も認められるため、介護業界では非常に需要が高い資格です。
もし介護福祉士の取得を目指しているのであれば、介護福祉実務者研修の取得も必須となります。
4-3.介護福祉士
介護福祉士は介護資格の中でも唯一の国家資格です。取得することで利用者に対する身体介護や生活支援はもちろん、ご家族の相談対応やアドバイス、介護職員の指導など、幅広い仕事ができるようになります。
介護福祉士を受験するためには3年以上の実務経験を有しているうえで、前述の介護福祉士実務者研修を取得しているか福祉系高校を卒業していることが要件となります。
5.訪問介護員(ホームヘルパー)の給料の目安
施設 | 勤務形態 | 平均給与 | 平均基本給 |
---|---|---|---|
全体 | 常勤 | 317,450 | 186,190 |
非常勤 | 209,540 | 137,790 | |
訪問介護事業所 | 常勤 | 315,170 | 191,780 |
非常勤 | 219,390 | 138,320 | |
介護老人福祉施設 (特養) |
常勤 | 348,040 | 193,480 |
非常勤 | 211,260 | 149,030 | |
介護老人保健施設 (老健) |
常勤 | 339,040 | 179,550 |
非常勤 | 287,360 | 189,650 |
厚生労働省が発表している『2022(令和4)年度介護従事者処遇状況等調査結果』によると、訪問介護事業所に勤務している常勤の職員の平均月収は315,170円、非常勤職員は219,390円です。
平均基本給は各施設とも大きな違いはありませんが、手当やボーナスなどを含めた平均給与を見ると差が生じていることがわかります。特に介護老人福祉施設(特養)では3万円程度の差が生じていますが、それは夜勤手当の有無が大きな要因です。
基本的に訪問介護事業所では夜勤がありませんが、いわゆる老人ホームには夜勤があるため、これが給与の差となっており、基本給の水準自体は大きく変わりません。
6.訪問介護員(ホームヘルパー)の3つの働き方
以上で訪問介護員の仕事内容についてご紹介しました。訪問介護員には常勤(正社員・正規職員)、非常勤(パート・アルバイト)等の雇用形態があり、大きく3つの働き方があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
6-1.事業所や施設に就職する
訪問介護事業所や住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅に常勤職員や非常勤職員として就職して訪問介護員として働く方法です。訪問介護事業所の場合は勤務時間が決められており、その間に利用者の自宅を訪問して介護サービスを提供します。利用者が慣れ親しんだ環境で介護サービスを提供するため受け入れてくれやすく関係を構築しやすい反面、移動に時間や手間がかかるという側面もあります。
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の場合は、施設に併設された訪問介護事業所から施設内の居室で介護サービスを提供するというスタイルになります。
6-2.事業所の登録ヘルパーになる
介護事業所にヘルパーとして登録して働くという方法もあります。働きたい日にちや時間を登録してその日だけ勤務し、自宅から利用者の自宅まで直行直帰するため、常勤や非常勤の職員よりも自由度が高い働き方が可能です。
ただし、給料は勤務した時間しか支払われず、登録をしたとしてもその日に仕事があるとは限らないため、収入は不安定になりがちです。また、常勤や非常勤の場合は移動時間も労働時間に含まれてその分給料が支払われますが、登録ヘルパーは一般的には移動時間は労働時間に含まれません。
6-3.派遣会社の派遣ヘルパーになる
介護専門の派遣会社に登録して事業所を紹介してもらって働く方法です。派遣の場合は常勤職員と異なり時給制となります。2~3ヶ月で契約を更新し、最大3年間同一の事業所で勤務が可能です。
勤務条件が良い事業所を選んで働けるというメリットはありますが、雇用期間は31日~3年間と決められているため、いくら条件がいい事業所、慣れ親しんだ施設であっても、3年で離れなければならないのがデメリットといえます。
7.訪問介護員(ホームヘルパー)の仕事に向く人
訪問介護員は他の施設の職員と比較して仕事の自由度が高い反面、利用者の自宅で1人で介護サービスを提供しなければならないため、厳しい面も多々あります。最後に、訪問介護の仕事に向いている人の特徴について見ていきましょう。
時間に縛られず働きたい
訪問介護は常勤、非常勤、登録、派遣など、さまざまな雇用形態があるので、自由度が高い働き方ができるのが魅力です。プライベートも大切にしたい、子育てや家庭の事情などで短時間しか働けないといった方でも働きやすいです。
ひとり一人の利用者と向き合いたい
訪問介護は利用者と一対一で接し、必要な介護サービスを柔軟に提供します。そのため、利用者としっかりと向き合って本当に必要とされているサービスを提供したい、利用者のためになる介護を実現したいという方ならやりがいをもって働けます。
臨機応変に行動できる
訪問介護は利用者の自宅で介護サービスを提供します。利用者の状態はもちろん、設備や環境も各家庭によって大きく異なります。どんな環境でも臨機応変に対応できる、自分で適切な判断が迅速にできるといった方も向いています。
この記事のまとめ
訪問介護は利用者の自宅で介護サービスを提供することになるため、入居型の介護施設とはまた違った難しさがあります。しかし、訪問介護ならではのやりがいもあり、自由度も高いため、合う人にはとっては非常に働きやすい職種です。
訪問介護の仕事に興味がある方は、ぜひ今回の記事を参考にしていただき事業所を探してみたり資格取得を目指してみたりしてみましょう。
介護21コラム記事監修者
株式会社アドバン
人材採用サポート・Web事業・印刷物制作を中心とする事業を展開する株式会社アドバンを1991年に設立。人材採用サポートの中でも、医療・介護業界に特化する専門求人サイト『医療21』『介護21』を運営。リアルな求人情報を届け、人材紹介ではない”ベストマッチングの場”を提供している。